見出し画像

子どもの発達障害──子育てで大切なこと、やってはいけないこと

SBクリエイティブ Web Books

「はじめに」公開

 この本は、「子どもの発達障害」を解説する本です。特に「発達障害の子どもの育て方」を解説していきます。「育て方」の本はすでにたくさん出ていますが、多くの本では親や先生が主役になっています。「親や先生は、発達障害の子をどう育てるか」という話になっているのです。
 この本では、子どもが主役です。幼児期から思春期にさしかかる時期までの子どもに限定して「発達障害の子は、どう育っていくのか」を解説します。そのうえで「では、親や先生など大人たちはどうすればいいのか」をお伝えしていきます。
 私は児童精神科医として30年以上、発達障害の専門医として「子どもが主役」という考えで診察を続けてきました。幼児期から成人期になるまでの長期にわたって診察してきた発達障害の方の数は、世界的に見ても多いほうだと思います。
 発達障害の子たちは成長のペースがほかの子と違います。定型発達の子どもに近づける必要はありません。その子なりのペースで大人になっていけばいいのです。
 本書で提唱するのは「こういう子どもに育てましょう」「親として、どう育てていくか」というものではなく、「この子はどんな子なのか」からスタートする子育て本です。世の中の多くの子育て本と違うところがあるので、読んでいて戸惑うこともあるかもしれません。でも「親の都合」を手放して「子どもの都合」で子育てをすると、親はとたんに楽になります。
 そもそも、子どもは親の都合に合わせて育っていくわけではありません。ですから、親の都合を優先していると、親はよく期待を裏切られ、イライラするかもしれません。
 子どもを主役にして子育てをしていけば、そんなイライラはなくなります。子どももイライラしなくなります。
 そして親の都合を引っ込めると、親は「なるほど、この子はこういう子なんだな」「だとしたら……いまはこういう気持ちかな」などと考えられるようになっていきます。
 子育てでは親の都合、親の欲目、親の下心を捨てることが、とても大事です。簡単なことではないかもしれませんが、この本を読んで試みていただければと思います。
 親が楽になり、子どもがのびのびと育ち、結果として、親子関係がよくなる子育て。それが「子どもを主役にする子育て」です。
 
特に発達障害の子の場合、個性的な子が多いので、親の都合で「平均的」「常識的」に育てていこうとすると、うまくいきません。でも親の都合を引っ込めて、子どもを主役にすると、うまくいきます。「この子にはどんな特性があるのか」「それに親として、どんな対応をしていけるのか」を考えるようにすると、いろいろな悩みが解消していきます。
 なぜなら、発達障害の子は、その子の特性に合った対応を受ければ、のびのびと生活していけるからです。
 この本を読めば、発達障害の特性がある子のことを、いままでよりもよく理解できるようになります。発達障害の特性がある子に、その子にあったほめ方や叱り方、接し方で対応していけるようになります。
 また、本書の内容は、発達障害の診断がある子だけでなく、診断がない子にも役に立ちます。診断がなくても、発達障害の特性がある場合には、同じような対応が有効だからです。「診断があるかどうか」にとらわれすぎないで、「この子はどんな子なのか」と考えて対応していきましょう。
 発達障害の診断がなくて、発達障害の特性があるかどうかもわからないという場合でも、この本を読んで「うちの子のことだ」と思ったら、この本の内容を生活にとり入れてみてください。悩みの解消につながることがあると思います。
 発達障害の子には、自分を理解してくれる大人が必要です。
 大人が子どものことを理解し、その子に合った子育てをしていけば、発達障害の子が不登校や身体症状、うつ、不安などの二次障害に苦しむことは減ります。みなさんにはぜひ、この本を二次障害の予防・改善のために役立ててほしいと思います。
 私はこの本を親だけでなく、保育園・幼稚園や学校の先生、療育教室のスタッフ、医療・福祉の関係者など、発達障害の子に関わるすべての人に読んでいただきたいと思っています。
 大人たち全員で、発達障害の子どもたちのことを理解して、子どもたちが日々の暮らしに苦しまなくても済むようにしていきたいものです。

著者・本田秀夫
◎信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事 精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より現職。日本自閉症スペクトラム学会会長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。 ◎著書に『自閉症スペクトラム』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』『子どもの発達障害』(いずれもSB新書)などがある。


■目次
第1章 発達障害の子育てを考える8つのクイズ

Q1 小さなイチゴをもいだ子にどう声をかける?
Q2 電灯のスイッチをいたずらする子にどう声をかける?
Q3 得意げに石集めする子にどう声をかける?
Q4 どうしても忘れ物してしまう子にどう対応する?
Q5 集団遊びに入ろうとしない子にどう対応する?
Q6 着替えるのが苦手な子にどう対応する?
Q7 一人だけ先に給食を食べてしまう子にどう対応する?
Q8 勉強が苦手で宿題に時間がかかる子への解決策とは?
……etc.

第2章 あらためて、発達障害とは?
「発達障害」とは数種類の障害の総称
発達障害には「重複」や「強弱」がある
特性が必ずしも「障害」になるとは限らない
病気というより「少数派の種族」
メディアに登場する発達障害への違和感
専門医として30年間見てきた「純粋な発達障害」
発達障害は本当に「障害」と言えるのか?
# グレーとは 白ではなくて 薄い黒
……etc.

第3章 発達障害の子のほめ方・叱り方
発達障害の子のほめ方:キーワードは「下心」
発達障害の子の叱り方:キーワードは「本気」
発達障害の子のほめ方・叱り方のまとめ
……etc.

第4章 発達障害の子の暮らし方 場面別のポイント
前編 生活スキル編
場面別のポイント①身だしなみ
場面別のポイント②食事
場面別のポイント③家事の手伝い
場面別のポイント④片づけ
場面別のポイント⑤忘れ物(持ち物の管理)
場面別のポイント⑥約束(予定の管理)
場面別のポイント⑦おこづかい(お金の管理)
場面別のポイント⑧寝不足(健康の管理)
場面別のポイント⑨マナー
後編 対人関係・ゲーム・学校編
場面別のポイント⑩対人関係
場面別のポイント⑪遊び・趣味
場面別のポイント⑫ゲーム
場面別のポイント⑬スマホ
場面別のポイント⑭宿題
場面別のポイント⑮勉強
場面別のポイント⑯読書
場面別のポイント⑰運動
場面別のポイント⑱習い事
場面別のポイント⑲不登校
場面別のポイント⑳いじめ
……etc.

第5章 あらためて、発達障害の子の育て方とは?
「早期発見・早期療育」が大事?
学校教育でも、無理をしないほうがいい
みんなで一緒に学習したほうがいい?
本来のインクルーシブ教育は「みんなで同じ」でなくてい
親が考える「間違ったインクルーシブ教育」 ………
発達が気になる子どものことを保護者にどう伝えるか?
学力や知的能力の高さと社会適応は分けて考える
……etc.

おわりに
読者のみなさんへの参考図書

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!