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発達障害の子は学校でどんな生活をしているのか

 発達障害の子どもには個性的な子が多く、それに対して学校はどちらかといえば平均的な子に合わせてつくられています。そのため、発達障害の子は学校生活をする中で、どうしても困りごとが多くなりがちです。
 
 私も学校関連の困りごとをよく相談されます。相談内容として多いのは「授業中に立ち歩く」「友達関係のトラブルが何度も起こる」「勉強や宿題についていけない」「配布物をなくしてしまう」といったことです。「子どもに発達障害の特性があり、どの学級を選ぶかで悩んでいる」という相談もよくあります。
  この記事では、そのような例をとりあげながら、発達障害の子がどうすれば学校でのびのびと過ごせるのかをいくつか解説していきます。
 

困りごと① 授業中に教室を飛び出してしまう子

親ができること どんな場面で飛び出すのかを聞いておく

教室を飛び出すことは学校内での出来事なので、家庭でできることは少ないのですが、親にもできることはあります。それは状況を把握することです。
 学校から「お子さんが教室を飛び出すことが続いている」という連絡を受けたら、「どんな場面」で「何をしているとき」に飛び出すのかを聞いておきましょう。その情報が対応のヒントになります。

 例えば「国語の授業で」「みんなで順番に音読をしているときに」飛び出しているのであれば、「音読が飛び出す理由なのかもしれない」という推測ができます。音読が苦手で、ストレスを感じているのかもしれません。

 理由がある程度わかれば、対応を考えやすくなります。また、子どもに発達障害や知的障害があって医療機関にかかっている場合には、学校から聞いたことを主治医に相談し、対応を一緒に考えることもできます。
 

困りごと②子どもが学校で友達を叩いてしまったら

親ができること 「相手への謝罪」と「事実の確認」

 親としては、まず相手に謝罪することが第一です。暴力を振るうという行為は、悪いことです。相手に悪いことをして、ケガを負わせたことを謝らなければなりません。それと同時に、同じトラブルを二度と起こさないように予防策を講じることも大切です。そのためには「どんな状況で相手を叩いたのか」を確認する必要があります。
 叩いたときの様子を子どもに聞いてみると、中には「ちょっとした小競り合いで偶然、手や足が相手に当たってしまった」ということもあります。その場合には相手に謝罪し、今後は気をつけるということでよいでしょう。
 それに対して、「うまくできないことを何度もからかわれた」といった理由がある場合には、「からかわれたこと」と「叩いたこと」を分けて考える必要が出てきます。相手が陰湿な意地悪を以前から何度も繰り返していたのであれば、その点にも対応しなければなりません。
 本人の話を聞くだけではわからないこともあるので、学校の先生にも事情を聞くとよいでしょう。そのときは「誰が悪かったか」を尋ねるのではなく、「事実として何があったか」を聞いてください。事実を確認し、子どもが実際に不当な扱いを受けたことがわかったら、その点については学校や相手方と話し合う必要があります。
 

困りごと③ 親や先生が口出ししないと、宿題をやらない子

親ができること 一通り教えたら、それ以上は何もしない
 
学校のような集団で、全員に一律の課題が出ていると、やりきれない子が出てきます。「宿題が大変」というのは、おそらくそういう状況です。全員一律の課題が出て、ついていくのが難しいときには、無理をしないほうがよいでしょう。

 子どもに合わせて課題がある程度調整されていれば、その子がプリントを破るような状況にはなりません。「宿題が大変」という場合は、全員一律の課題が出ているか、調整が不十分で、宿題が子どもに合っていないということです。それは子どもの問題ではなく、宿題の設定の問題です。そのような課題に取り組んでも負担がかかるだけで、学習にはつながらないので、無理をする必要はありません。
 
宿題については、以下のような対応をおすすめします。
 
①   宿題の基本的なコンセプトを教える。宿題というのは家庭など学校以外の場所でやって、期限までに提出するものだということを説明する。
 
②   最初は子どもが忘れること、うまくできないこともあるので、少し手伝う。宿題をすることが定着したら、そこから先は基本的に本人のペースに任せる。
 
③学年が上がると、子どもが宿題をやりきれなくなることもある。そのとき、無理にやらせようとしない。課題が合っていないと考える。
 
④   学校の先生に宿題の難易度や量を相談するか、それが難しければ、家庭の方針として「宿題を無理にやらなくていい」と子どもに伝える。
 
 家庭での対応は、これで十分だと思います。親子関係を険悪なものにしてまで、宿題をやる必要はありません。子どもに宿題をやらせることよりも、親と先生で協力して、宿題の難易度や量を調整することを優先しましょう。

※本記事は『学校の中の発達障害』の一部を再構成したものです

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4815615837

『学校の中の発達障害』(SB新書)のおもな内容

1章 親と先生にできること
・困りごと①:教室を飛び出してしまう子に、どう対応する?
・何より大切なのはコミュニケーション

2章 学校の中の発達障害
・学校の中の発達障害
・困りごと②:子どもが学校で友だちを叩いてしまったら
・なんのために学校に行くのか
・ユニバーサルデザインと合理的配慮
・あらためて、親と先生にできることを考える

3章 学力と知的障害・学習障害
・困りごと③:親や先生が口出ししないと、宿題をやらない子
・学力をどう考えるか
・学力を伸ばすのが教育なのか
・あらためて、学校教育とは
・困りごと④:勉強をするのが嫌で、イライラする子への対応
・学力と知的障害・学習障害

4章 特別な場での教育――学校・学級の選び方
・困りごと⑤:学校からの配布物をきちんと持ち帰れない子
・特別支援教育の仕組み
・どんな支援が受けられるのか
・学校・学級の選び方
・特別支援教育の「その後」を考える

5章 これからの学校教育
・困りごと⑥:子どもに「学校に行きたくない」と言われたら
・困りごと⑦:それでもやっぱり「特別扱い」は不安・・・
・どうして「特別扱い」は目立つのか
・学校を小さな「共生社会に」
・どんな集団をつくればいいか

著者:本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より現職。日本自閉症スペクトラム学会会長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。著書に『自閉症スペクトラム』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』『子どもの発達障害』(いずれもSB新書)などがある。

 


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