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お金も時間もいらない、「会話」に着目した科学的な子育てメソッド!

子育てをするには、あまりにも時間が足りない。子どもにしっかり向き合いたくても、仕事や家事に追われ、十分な時間が取れない。そんな悩みを抱えていませんか。

誰もが直面する現代の育児事情に対し、自身も2児の母親であるハーバード大学教育学博士が、最先端の教育学、心理学、言語学の知見を動員して、解決策を導き出した書籍が、2022年10月8日発売の『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(https://www.sbcr.jp/product/4815615864/)です。

その本のIntroductionより、一部を掲載します。

「お互いよくやったわね」。私は夫のフィリップに声をかけました。2人の子どもを寝かしつけ、片付けを終えたところでした。「でも、私たち、何を話した?」
「さあ」。フィリップの言い方はいつだってストレートです。「いつもと同じ話だと思うよ。正直言って、覚えてない」
 私たちはボストンのアパートで、慌ただしい1週間の締めくくりとして、翌週の予定を立てようとしていました。それが日曜日の恒例でした。やることをきちんと整理してから、月曜日を迎えないといけません。
 でも、どれだけがんばっても、何かしら忘れるのが普通でした。単純に、やらないといけないことが多すぎました。他の多くの家庭と同じく、わが家の平日はやることに追われるうちに過ぎていきます。もちろん、週末も。物事に優先順位をつけたり、振り返ったりする時間はありません。そして、はたと気づいたのです。夫婦や親子で会話する時間もほとんどない、ということに……。
 私の職業と関心を考えると、「よりによって私が?」と言いたくなる状況でした。
 というのも、私は言語聴覚士、講演者、研究者として、主に子どもの言葉や読み書きの発達を理解・支援するようになって、10年以上になります。ハーバード大学教育大学院と同医学大学院で教鞭も執っています。長年、幼児から大学院生まで幅広い年齢の子どもたちを相手にしてきました。
 職業柄、貧困地域の幼稚園、モンテッソーリ教育の学校、病院、診療所など、様々な場で、子どもやその家族と接してきました。一対一で、少人数で、教室で、子どもたちの言語力と読む力を評価し、「話す・聞く・読む・書く」のスキルを教えてきました。学習支援の専門家として、読み書き障害や自閉症(訳注:自閉スペクトラム症)の子どもたち、“ 読み”に大きな困難を抱える子どもたちも指導してきました。その子たちの発達を理解し、一人ひとりを丁寧に見守り、親と話し合い、支援策を考えることに、情熱を注いできたのです。
 だから、その日に夫へ投げかけた疑問は、一見些さ 細さいだけれど、私にとっては重大なことで、何日も頭から離れませんでした。大量のことをこなしはしたけれど、会話らしい会話はしただろうか、と。
 ただ、他の親と話してみると、会話が足りないのはわが家だけではありませんでした。目が回るほど忙しく、家族とじっくり会話する時間を取れていない人ばかりだったのです。
 ある友達は言っていました。「私たち夫婦の場合、家に着くのは夕飯ぎりぎり。しかも、あっという間に寝かしつけの時間でしょう」。別の友達はこう言っていました。「夕飯のときには、息子をかまってあげたほうがいいってわかっているの。でも、あの子がおとなしく食べているタイミングを見計らって、私も夫もメールをチェックしてる」
慌ただしい家庭生活に追われ、表面的な話をするのが精いっぱいなようでした。私が知っている親の多くは、仕事と親族の介護をしながら育児をしていました。いわゆる“サンドイッチ世代”です。そうでなくとも、夜勤や出張、長距離通勤などの事情で子どもと過ごす時間が限られていて、せめてその時間を有意義なものにしようと必死な人もいれば、学校の用事や習い事の付き添い、大学受験の手続きやサポートに追われて疲れ切っている人もいました。

すばらしい会話が生まれるとき

わが家の会話についてあらためて振り返ってみたところ、当時5歳だった娘のソフィーと私は、ふだんから熱心で刺激的な会話をたくさんしていました―ただ、その記憶が頭の片隅に追いやられていただけで……。
 ソフィーをボストン美術館に連れて行ったときのことです。ソフィーは古代エジプトの部屋の薄暗い通路を走り回り、石棺を1つひとつのぞき込んでは、次々と質問をしました。そして、ようやくひっそりとした暗い通路のベンチに座り、口を閉じました。
「ミイラたちはどこに行ったの?」長い沈黙のあと、ソフィーが尋ねました。
「ごめん、今なんて?」私は足をぶらぶらさせているソフィーの横に腰を下ろしました。
「ミイラはもうここにはいないって、ママ言ったでしょ? 体はあるけど、もういないのよ、って。じゃあ、ミイラはどこに行ったの?」
「なかなかいい質問ね」精神性に理解はあっても宗教に疎うとい私には、とうてい答えられない質問でした。だから、言葉を濁にごしました。
「死んだ人は別の世界に行く、ってエジプト人は考えていたの。だから、一生懸命ミイラにしたのよ」
「それで?」とソフィーはじれったそうに言いました。「何がなくなったの? 体はまだここにあるのに」
「そうね……でも死んでいるの」
「だよね」一瞬間があってから、堰せきを切ったように質問があふれ出ました。「でも、死んだ人はどこに行ったの? 生まれる前はどこにいたの?」ソフィーの目が私の目をとらえました。
「ママは? 生まれる前どこにいたの?」
「それは……難しい質問ね」 私は時間を稼ごうとしました。「覚えてないな。ソフィーは覚えてるの?」
「覚えてない」目を細めて、首を横に振ります。
「でも、想像してみて」
すると、「生まれる前は、おじいさんだった」と意外なほどはっきりとした答えが返ってきました。「歳とし取ってるのにうんざりして、赤ちゃんに戻ったの」
「なるほどね」私はソフィーに腕を回しました。
「もうお腹ぺこぺこ」ソフィーは勢いよく立ち上がり、くるりとこちらに向き直りました。「お昼にしよう」
 帰りながら、私はソフィーの発想と柔軟性に驚嘆せずにはいられませんでした。どういうわけか、ソフィーは5歳にして輪廻転生とも言えそうな概念を思いついたのです。
 ソフィーはなぜあのタイミングで、あんな話をしたんだろう―私は記憶をたぐり寄せました。ソフィーがミイラに夢中になったのは、ハロウィーンの絵本を読んでからです。その後、おしゃべりができるようになるとほぼ同時に、「ミイラは本当にいるの?」「嚙かむの?」と尋ねました。
 今日聞いた発展形の疑問は、急に出てきたわけじゃないんだ、と私は気づきました。あれよりずっと単純な疑問から始まって、少しずつ作り上げられたものなんだ。
 でも私の受け答えはどうだった? と考えてハッとしました。私が答えられなかったからこそ、ソフィーは余計に会話にのめり込んだ気がしたからです。私はいつだって、ソフィーが浴びせる数々の質問に、できるだけ答えてきました。でも今回は、「わからない」と認めて、知ったかぶりはしませんでした。会話を深める意思を示し、その機会を提供しただけです。
 当時は気づいていなかったけれど、こういう会話をする機会は、その気さえあればいくらでも作れます。完璧に答えられなくてもいい。専門知識もいらない。問いかけのスキルすら関係ない。そもそも発言の適切さなんてまったく重要ではありません。
 それより、相手の答えを楽しんで待つ姿勢のほうがはるかに重要です。言葉によってきっかけを与え、その後の展開は子どもに任せるのです。
 公平を期して言うと、あのときのソフィーとの会話は、決して「日常」ではありませんでした。3年経った今でもよく覚えているという事実が、「このような会話は、努力して紡つむがなくてはめったにできるものではない」ということを物語っています。
 でも、こういう会話が「日常」であってもいいはずです。あのときは、静かな時間と場所のおかげで、ソフィーに意識を向けやすく、質問にじっくり答えやすかったのは確かです。だからといって、そういう会話をするために、特別な状況を作る必要はありません。家から出る必要さえありません。本を読んでいたあのときだって、シリアルの箱の裏側を見ていたあのときだって、すばらしい会話は生まれていたかもしれないのです。
 そうはいっても、会話の優先順位を上げるにはどうすればいいんだろう、と私は悩みました。毎週のスケジュールに「上質な会話をする」という項目を加える? でも、私の知る限り、気力も時間も余っている人なんていないのだから、誰も罪悪感を覚えなくていいはず。だとしたら、家庭での会話についての考え方を私は変えなくてはいけないし、他の親たちも本当はそうしたいのかもしれない。だって、上質な会話が、やることリストの一項目でもなく、悩みの種でもなく、チャンスだと思えたら、どんなにすばらしいか……。
 実際、会話の質は変えられるし、それを効果的に実現するための、科学に基づいた手法も存在します。チャンスは、いつでも、どこにでも、誰にでもあります。本書では、深い本物の会話が不足しがちな理由、さらには、深い会話を増やし、好奇心と思いやりにあふれる子どもを無理なく楽しく育てる方法をお伝えしていきます。
 少しのコツと重要な習慣を取り入れるだけで、すばらしい会話のチャンスはぐっと増えます。
上質な会話が、覚えておくべきことでもストレスでも仕事でもなくなり、毎日に輝きと楽しみを加えるチャンスになります。上質な会話を日々の生活に織り交ぜれば、いろいろなことが面白くなるし、何より、子どもをはじめ家族全員が生き生きし始めるはずです。
 話を進めるにあたり、用語について簡単に説明しておきます。本書では、読みやすさの観点から、「親」という表記を用いていますが、ありがたいことに、子どもを愛し、育て、世話する大人は、親以外にもたくさんいます。祖父母、いとこ、おば、隣人、里親、ホストファミリーはもちろん、教師、保育士、校長、ベビーシッター、ナニーもその一人です。育児はまさに「地域ぐるみ」でやるものだし、それは子どもとの会話にも当てはまります。だから、あなたが日常的に子どもと接しているなら、本書はきっと役に立つでしょう。


ハーバード大学教育学博士×発達支援専門の言語学者が教える 自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ

汐見稔幸氏(東京大学名誉教授)推薦
――親子関係の悩みが解決。すべての親が共有すべき教科書だ!
中室牧子氏(慶應義塾大学教授、教育経済学者)推薦
――子どもとの会話は量より「質」。最新の研究成果が凝縮!

目次

Introduction なぜ「会話」こそが重要なのか?

Chapter1 「リッチトーク」とは何か?――時間がなくても上質な会話はできる
子どもにとってストレスとなる会話
話す時間と余地を与えれば子どもは変わる
すばらしい会話の技術は磨ける
私が「リッチトーク」にたどり着くまで
会話は子どもとつながるための入口
なぜオンラインではなく、「対面の会話」が重要なのか?
スマートフォンを禁止すればよいわけではない
リッチトークに必要な「ABC」    など

Chapter2 学びをはぐくむ会話――一生ものの好奇心に火をつける
対話は時とともに変わる
子どもの学びをはぐくむ日常会話とは?
セルフトークが感情を左右する
「3つのE」でリッチトークを発動させよう
子どもに手取り足取り教える必要はない
会話は子どもの能力を信じている証
3つのEを使って本の好きな子に育てる
学びを重視するなら読書のルールに固執しない
「学び方を学ぶ」ことでメタ認知を鍛える
親は自分自身の態度も意識しよう
○会話の習慣1 「なぜ」を問う会話で因果関係に答える
○会話の習慣2 疑問を膨らませる
○会話の習慣3 思考や状況を俯瞰する     など

Chapter3 共感性をはぐくむ会話――他者視点を養う
共感性は「あるに越したことはない」以上のもの
共感性はどのように発達するか?
共感性の“プロフィール”は一人ひとり異なる
最近の子どもはなぜ共感が苦手なのか?
共感性をはぐくむ足かせとなる二つの誤解
自分を思いやる「セルフ・コンパッション」という鍵
共感とはミステリーを受け入れること
上質な会話は心と頭を結びつける
感情に名前をつける時間を取る
3つのEを使って「感情の達人」を育てる
リフレクティブ・リスニングに使う4つのP
晴れやかな感情も嵐のような感情も受け入れる
共感構築にとってNGとなる話し方とその解決策
○会話の習慣1 共感的な冒険をさせる
○会話の習慣2 「if」を取り入れる
ミステリーを受け入れる心を忘れずに     など

Chapter4 自信と自立性をはぐくむ会話――積極的に挑戦させる

子どもは手伝いたいし、手伝わせる必要がある
そもそも自信とは何か?
幼少期にはぐくまれるのは自信か自己不信か
粘り強さを育てるにもコントロール感が大事
子どもが挑戦する瞬間が、自信をはぐくむチャンス
子どもの「内発的動機」を信じる
スキルと課題を振り返って「願望を願望する」子どもに
親は無意識にシグナルを送ってしまっている
3つのEで自信をはぐくむ――目標の選択と振り返り
いたずらにもイライラせず、その本質に目を向けよう
セルフトークで「自分をコーチ」できる子どもに
○会話の習慣1 明確にする、話し合う、計画する
○会話の習慣2 自立性を高めるために効果的な方法を取る
○会話の習慣3 達成までの道のりを描く     など

Chapter5 遊び心をはぐくむ会話――喜びと創造性を引き出す
遊びとは活動ではなく、遊び心を持つという姿勢
理想的な遊びとはどのようなものか?
遊びと創造性は密接に関連している
べったり育児は遊びを阻害する
遊び心のある会話で想像力があふれ出す
ごっこ遊びにも3つのEを使う
遊び心にあふれた姿勢は伝染する
遊び心あふれる会話でけんかが収まる
遊びの質を高めるために、会話をバロメーターにする
ゲームについての会話に偏見は禁物
○会話の習慣1 言葉で遊ぶ――パターンを探す
○会話の習慣2 会話で遊ぶ――変形させる
○会話の習慣3 遊びは「疑問を膨らませること」ととらえ直す
○会話の習慣4 子ども主導の遊びを推奨する     など

Chapter6 気質を活かす会話――素質を最大限に開花させる
そもそも気質とは何か?
人生において気質はいつまでも付きまとう
気質の差は幼少期から出始める
気質について話すことで、子どもは自分を受け入れられる
学校と子どもの気質の相性
異なる気質には異なる育児を
子どもの気質を学び、子どもに合った会話をする
ネガティブな連想を捨て素直に眺める
気質について会話するための4つのステップ
「ROOM」のプロセスで関係性を円満に
繊細な子どものための会話
○会話の習慣1 イラ立ちをコントロールするには、背景を確認する
○会話の習慣2 自己認識を促すために、繊細な話し合いをする
○会話の習慣3 不一致を解消するために、気質の違いを優しく受け止める
気質の“プロフィール“を話し合いのきっかけにする     など

おわりに リッチトークの価値はすたれない


著者
レベッカ・ローランド(Rebecca Rolland)
音声言語病理学者。ハーバード大学教育大学院講師、ハーバード大学医学大学院教員、ボストン小児病院神経内科に所属する言語療法の専門家。
言語聴覚士の国家資格を有し、幼児から高校生までの子どもを対象に、教育現場でカウンセリングや学習補助をしている。発話言語や読み書き障害、および子どものコミュニケーション能力の発達について研究し、教師の専門性向上に取り組んできたほか、アメリカの新聞や雑誌などさまざまな媒体で教育や子育てに関する記事を寄稿している。
ハーバード大学教育大学院で教育学博士号、MGH附属保健医療大学院で言語病理学修士号を取得している。ボストン在住の2児の母親でもある。
――――――――――
翻訳者
木村千里(きむら・ちさと)
上智大学文学部英文学科卒業。システム開発に従事したのち、フリーランス翻訳者となる。訳書に『ウォートン・スクールの本当の成功の授業』『心の容量が増えるメンタルの取扱説明書』(ともにディスカヴァー・トウェンティワン)、『ウェルビーイングの設計論』(共訳/ビー・エヌ・エヌ新社)、『1440分の使い方』(パンローリング)、『帰還兵の戦争が終わるとき』(草思社)、ほか。

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